ジオパークについて

ジオパークについて細々と紹介しています。 ジオパークに関する概念から、保全・教育・地域振興について、 少しづつですがまとめていきたいと思います。

2 つの視点から見たジオパーク

はじめに

前回の記事では、ジオパークプログラムについて

日本ジオパーク委員会日本ジオパークネットワーク

それぞれ異なった、2つの視点からの説明を紹介した。

 

 

geopark.hatenablog.jp

結局の所、

  • 言葉1つ1つの意味や背景がよくわからない。
  • もっと端的に表現したい。

 という事で、少し深堀りしていこうかと思う。

 

2 つの視点

日本ジオパーク委員会日本ジオパークネットワークは、

それぞれ立場の違う組織なので、視点が異なる。視点は異なるが、

冒頭にGeo について触れ、

その後に教育・実用(例えば、持続可能な開発・楽しみ)に関して述べている点
では共通している。

この記事では、ジオパークの説明について共通している点と異なっている点を、それぞれの観点から解説しよう。


日本ジオパーク委員会の視点

まず、日本ジオパーク委員会の説明を見てみよう。

彼らの使う"Geology"(地質学的)と言う言葉は、

"Geo"ラテン語で地球・地上などを意味する接頭辞)と"logy"(学問を意味する接尾辞)を組み合わせてできる。

地質学(Geology)という言葉がキーワードとして出てくる。

それは、UNESCO はガイドラインの中で、

ジオパークでは、地質学的な重要性がなければならない。そして、それは地球科学に関連する分野の科学専門家によって独立して評価される。」

と述べている事からも重要な事が分かる。

彼らは、学術的に重要な地質を保全して、将来に残していこうと考えている。

重要な地質を将来に残すために、

彼らは地域に誇りや愛着を持ってもらう様、

啓発活動を行っている。

 

ジオパークの枠組みの中では、地球科学の専門家の影響力が大きい。

その理由は、ジオパーク発足の動機が関係する。

そもそも、ジオパークはヨーロッパの地球科学者たちが学問上重要なサイトが、

無計画な化石や鉱物の売買などの人間の活動によって、

地球科学的に価値を持つ環境が破壊されていることに危機感を持ち、

地質資源の保全を考えたことによって活動が開始された(Eder and Patzak 2004, Zouros 2004)。

 

地球科学者にとってここで言うサイトとは、

学問上必要であると言うだけでなく、

後輩の育成の場でもある。

彼らは先人からその地域の地球科学について学び、

それを後世に受け継いでいる。

また、生活の大部分をその地域で過ごす場合もあり第2 の故郷とも言える。

そのような場は、地球科学という学問のみならず、人類が残していくべき文化そのものである。

地質という地域の遺跡を研究対象として、

それを保全することによって人類の持続可能な開発につなげると言う行為は、

UNESCO プログラムと非常に相性が良い。

 

UNESCO 憲章では、その前文と目的の中で、
『平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない【中略】世界の遺産である図書、芸術作品並びに歴史及び科学の記念物の保存及び保護を確保し、且つ、関係諸国民に対して必要な国際条約を勧告すること。』
と宣言している。

UNESCO 憲章で述べられている活動理念は、地質資源の保全を重要視することから、地球科学者達の価値観と一致している。

そのため、2015 年にジオパークはUNESCO の正式なプログラムになった。

このように、地球科学者の視点から見ると、

ジオパークは地球科学と言う学問の上に成り立っていると言える。


日本ジオパークネットワークの視点

続いて、日本ジオパークネットワークの説明を見てみよう。

こちらの説明もGeo の説明から始まるのは共通している。

言葉として「ジオパーク」は、Geo(大地の・地球の) + Park(公園)と説明されることが多い。

 

しかし、この説明は漠然とし過ぎていて意味が捉えきれないだろう。

こうした漠然とした説明がなされるあたりに、

ジオパークの概念が人によって様々に受け止められて、

複雑になってしまう原因があるのかと思われる。

 

しかし、ジオと言う言葉はこうした曖昧な表現にすることによって、

汎用性が高くなり多くの団体に受け入れられている側面もある。

ジオパークネットワークを構成する団体は、

行政・非営利団体営利企業・研究機関など様々である。

彼らの多くは、UNESCO がジオパークをプログラムとした後に活動に参加した。

 

当然、彼らは地質学を専門にしない。

そういった観点からこの説明を見ると、

日本ジオパーク委員会の説明にはあった、

"地質学"と言う言葉が日本ジオパークネットワークの説明には抜けている。

 

また、日本ジオパーク委員会の説明にはなかった、

"公園"と言う言葉が日本ジオパークネットワークの説明には入っている。

 

日本ジオパークネットワークが言うところのジオパークとは、

学術的な価値はひとまず置いておいて、地質を含む地域資源を有効活用して、地域の発展に活かしていこうと言う思いが込められているのである。

 

まとめ

この記事では、ジオパークプログラムを主導する2つの団体の意思について、

少し深堀りした。

何れにせよ、全ての事が地質の保全・保護」をベースにしていると言う点では共通している事がわかる。

 

この保全・保護」について、どの様な方針で活動しているか?が、

現状のジオパークの課題について考える鍵となる。

 

そこで、次回の記事では、ジオパークの「保全・保護」活動の方針について

解説していくことにしたい。

 

今日はここまで。